平成22年年3月4日午後3:30〜5:00 全国保険医団体連合会会館8階会議室において「保団連緊急マスコミ懇談会」が開かれました。マスコミ側からNHK、TBS,朝日新聞、讀賣新聞等7社が出席、保団連側からは歯科代表の宇佐美宏先生、海外委託問題担当理事成田博之先生、事務局森茂先生、それに本部代表の脇本征男が出席させていただきましたので、脇本の発言内容を公開いたします。
違法入れ歯断固阻止・歯科医療を守る国民運動推進本部
代表 脇 本 征 男
無理が通れば道理ひっこむ
貴重な機会を頂戴し、保団連に心から感謝申し上げます。
歯科技工の海外委託問題が勃発して久しいが、本来であれば、業界の代表であり責任者であるはずの公益法人としての日本歯科医師会と日本歯科技工士会が、率先して「わが国国民の口腔の安心と安全を守ることを趣旨・目的として制定」された歯科技工士法の遵守を責務として、監督官庁の行政である厚生労働省に対し、その違法行為の是正・行政指導・行政処分を求めていく事が、業界団体としての執るべき、与えられた権能であると認識することが一般的社会常識と考えられます。
それとも、わが国の歯科医療業界は一般社会常識が通じない程の、やんごとなき神々の祭りし高尚なるカスミの彼方にあるとかや? 業界では天下の日本歯科医師会や日本歯科技工士会が「違法行為」に立ち向かえない特段の事情があるように伺えて仕方がありません。あるとするならば、率直に国民と業界人に対し説明責任の義務があると信じます。
それが、行政がらみで抜き差しならないことなのか、法的解釈に基づくものなのか、いずれにしても「法的解釈」は最高裁判所でのある意味の決着を待つとしても、それ以外の閉塞的な作為的画策理由があるとするならば、真情が遮断されたままひたむきに業を成しているまともな業界人と業界事情皆無な国民(患者)にとって、看過されるべきことではありません。
まさか、言われるところの「17年通達がらみ」の政官業の癒着によって、「証せない秘部(所)の利益誘導」などということではあるまいことを念ずるものであります。
本質的に、歯科技工士法第2条(用語の定義)この法律において、「歯科技工」とは、特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物、充てん物又は矯正装置を作成し、修理し、又は加工することをいう。ただし、歯科医師(歯科医業を行うことができる医師を含む。以下同じ。)がその診療中の患者のために自ら行う行為を除く。
歯科医師が自ら行う行為が「歯科技工」の概念から除かれることだけであって、自ら行う行為がそのまま「歯科医師の裁量で海外委託OK」などとは考えられることではなく、他人、それも自らの代理人と定められた歯科技工士にではなく、「禁止事項の無資格者」に委託して可とするなど、考えられない暴挙であり、悪辣な詐欺行為そのものです。
少し手慣れた隣の「無資格おばちゃん」に入れ歯を作らせることと何ら変わるものではありません。
史上の業界慣習から、歯科技工士はだまって入れ歯を作っていればそれで良いのだと、もし、頭の片隅にお考えある先生が居られるとしたら、それは大きな間違いであります。
需要が高まる歯科医療に対応するために、歯科医師自らがチェアーサイドに専念でき、国民歯科医療をより円滑に推し進める趣旨と目的で、補綴部門を自らの代理人と定め、その部門の専門職として「歯科技工士」を誕生させたことは自明であります。
歯科医師自ら行って来られた一部、大変で、汚れも少なからず、性根が要る仕事、歯科技工士は、その部門を法律に従って、ひたむきに代理人として業としてまいりました。
歯科医師の裁量と言えども、当然ながら、法律を超えるものであってはならないのは周知の事実でありますが、そんなに単純で威厳のないものとは考えられません。自ら医師として国民(患者)からの畏敬の念を打ち捨てているようなものです。「法は破られるためにある」とは申せ、国内法云々以前に「誰のための法律」なのかを重く受けとめる必要があります。医師として全責任を負わなければならない崇高な「個人輸入」の領域にまで立ち入る気持ちは一切ございませんし、そこまで高慢でもありません。
ただ、「歯科技工物」は単なる「物」とは違います。尊敬する歯科医師から模型と共にわたされる、特定人の「動くカルテ」とも言うべき「歯科技工指示書」に忠実に従い、全精力を傾注し作成され、歯科医師によって装着された後は生態機能を果たし、人工臓器とも成りうる、貴重なその人だけの人体の一部となるのであります。
時代とは申せ、事の本質を忘却し、欲望の赴くままに本音をむき出しに経済至上主義のみに翻弄され、人体の臓器を「雑貨、雑品」としての扱いに手を染めるなど、医療人の風上にもおけない諸業であります。世界にも確たる「免許制度」という国民歯科医療制度の存続にもかかわる、重大な国民の健康や生命に関与する憲法に謳われる公衆衛生上の使命という、大切な一面を絶対に忘れてはならないと考えます。
奇しくも、2月6日、13日の両日放映されたTBSテレビの特番を見られた国民(患者)から、歯科医院(診療所)に対して、多数の不安や問い合わせが殺到し、電話がひっきりなしに寄せられていると言うことです。
その主たるは、「初めて知った。知らなかった。おそろしい。あんな危険を何で許しておくのか。 法律はないのか。 国は何とかしろ。歯医者さんの団体はこんな事を認めているのですか。 技工士さんたちも団体で何で怒らないの? 日本は免許制度だと聞いていたが。 先生のところは大丈夫なんですか。 等々・・」ということです。
TBSは報道機関として、長年の熱心な取材活動に基づいて、真実を報道して頂いたことについては心からの感謝を申し上げておりますが、残念ながら問題提起で終わっております。
又、諸々の海外委託問題におけるマスコミ報道をはじめ、厚生労働省の研究班が調査に乗り出すことや各業界関係団体の支援行動の拡大等は、私たちの訴訟提起が契機になっていることは自明の理であります。
現在は、予想以上に全国規模で支援や周知の輪が拡がり、各自治体の意見書採択は42県市町村議会(22,211,579人)や、各歯科技工士会においては全面支援が38県、条件付きでの支援が5県という、まことに有り難いご支援を頂戴しております。また、支援金も順調にご献金賜り、現在まで590万円を超える浄財を頂戴致し、弁護士費用、訴訟活動費等に滞りなく支払いさせて頂いております。まだまだ原告だけでは負担が適う状態ではありませんので、今後も最高裁終了時まで最後のご支援をお願い申し上げます。
只今は、上告した最高裁で書面審査の最中ではありますが、3ヶ月を擁すると聞き及んでおります。
訴えはいかにも単純であります。民事を選択した以上お金が付きまといます。しかし、それは最初から原告80人の誰一人として一円のお金も目的ではなく、「海外委託は違法ではないのですか」を問うているだけなのです。
TBS報道でもお分かりの通り、歯科医師が承知で違法委託することよりも、歯科医師の知らないところで、一旦わが国の歯科技工所が受託し業者を通して海外に違法委託されている事実が判明しました。
「歯科技工」が違法行為の闇の中で、右往左往されること自体、法律は勿論のこと国民の健康、生命を愚弄する犯罪行為です。
報道からの課題は、現在の法律において「安くて、安全で、良い物」だったら良いのかと言うことです。
「法律は基本的に守ろう」とするならば、これこそが遵法精神であり、国民の健康、生命を守るための業界といえるのではないでしょうか。
非理屈、誹謗中傷を並べ立てるより、自らのこととして本質の不合理には毅然として立ち上がり、是正行動を貫くことこそが真の自分も含めた国民の幸福のためになると考えます。
以上
プリント用pdfファイル↓
22-3-4 masukomikonndann-wakimoto .pdf