2008年11月22日

控訴理由

平成20年(行コ)第347号 損害賠償等請求控訴事件
 控 訴 人   脇本 征男 外
 被控訴人   国


控訴理由書

                       平成20年11月21日

東京高等裁判所第20民事部  御 中

              控訴訴訟代理人弁護士  工 藤  勇 治
              
              同           川 上  詩 朗

              同           岩 ア  泰 一

第1 はじめに
1 原判決は,控訴人(原告)ら歯科技工士の法的地位について,「業務独占の結果として一般に歯科技工士が安定的に業務の委託と報酬を受け得るという経済的利益」と捉えることを前提に,同利益は「事実上の利益」にとどまり,「法律上の利益」にあたらないと判示している。また,歯科技工の海外委託に関する国の具体的措置の方法・内容については,当該行政庁の「合理的な裁量」に委ねられていると判示している。
  そのうえで,公法上の当事者訴訟(確認訴訟)に関しては,法律上の争訟性及び確認の利益がないとして訴えを却下し,国家賠償法1条に基づく損害賠償請求訴訟に関しては「違法」性がないとして棄却している。
2 それに対して,原判決への批判も含めて控訴人(原告)らの主張の要旨は,次のとおりである。
(1) 歯科技工士の法的地位について
ア 原判決が歯科技工士の法的地位に関して判示した内容は限定的であり妥当でない。歯科技工士の法的地位については,端的に「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」と捉えるべきである。
イ その利益は,一般的公益に解消されるものではなく,控訴人(原告)ら個々の歯科技工士に具体的に保障されている「法律上の利益」である。
(2) 合理的裁量論について
  歯科技工の海外委託に対する被控訴人(被告)国の対応は,歯科技工士法等に違反する違法なものである。したがって,国に一定の裁量が認められるとしても,歯科技工に対する国の対応は,裁量権の濫用乃至は逸脱として違法である。
(3) 法律上の争訟性・確認の利益・国賠法上の「違法」について
  平成17年通達により歯科技工の海外委託を許容したことにより歯科技工の海外委託を誘発・促進している(作為)。また,国が歯科技工の海外委託の実態を調査しないこと,調査の結果歯科技工士法等の違反が認められるにもかかわらず指導等を行わずに放置している(不作為)。これらの行為は歯科技工士法等に違反する違法な行為であり,それにより原告ら個々の歯科技工士に認められている歯科技工業務の独占的地位が脅かされている。
  そこで,控訴人(原告)らは,本件訴訟において,控訴人(原告)らには,海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利があることの確認を求めているのであるから,法律上の争訟性,確認の利益が認められるべきである。
  また,上記実態に照らすならば,被控訴人(被告国)の上記作為及び不作為は「違法」である。そして,それにより控訴人(原告)らは精神的苦痛を被ったのであるから,国賠法1条に基づき損害賠償請求は認容されるべきである。
3 控訴人(原告)の主張の概要は上記のとおりであるが,本書面では,上記主張に関して,次の順序で論じる。
(1) 歯科技工の海外委託の実態について
  ここでは,まず歯科技工海外委託の類型について整理をしたうえで,原審での主張に加えて,全国保険団体連合会(以下「保団連」という。)が平成20年5月末から6月末の間に実施した「保団連海外技工物緊急調査結果報告書」(以下「保団連報告書」という。甲39号証)に基づき,歯科技工海外委託の実態について論じる。さらに,歯科技工海外委託仲介業者の実態に関して,原審での主張に加えて,特に歯科技工士法26条の広告制限に違反する実態について論じる。
(2) 歯科技工の海外委託の違法性について
  上記歯科技工の海外委託の実態を踏まえて,歯科技工海外委託の問題点とその違法性について論じる。
(3) 公法上の当事者訴訟(確認訴訟)と国家賠償請求訴訟
  上記歯科技工の海外委託の実態,問題点及びその違法性を踏まえたうえで,かかる違法な歯科技工海外委託を許容・誘発・促進し(作為),あるいは放置している(不作為)国の違法な対応について論じる。
  そのうえで,本件公法上の当事者訴訟(確認訴訟)について,法律上の争訟性,確認の利益が認められること,国家賠償法上の「違法」性が認められることを論じ,本件訴訟がいずれも認容されるべきことを論じる。
 
第2 歯科技工の海外委託の実態
1 歯科技工海外委託の類型
(1) 現在,日本で行われている歯科技工の海外委託については,@委託者が歯科医師か歯科技工士か,A仲介業者を介するか否か,B歯科医師が海外委託について認識があるか否かにより,いくつかに類型化されるが,主だった類型は,歯科医師が仲介業者を介して海外に委託する場合と,歯科技工士が仲介業者を介して海外に委託する場合がある。このうち,後者の場合,歯科医師が知っている場合と知らない場合があり得る。
(2) また,委託した歯科技工物が日本に輸入される場合,補てつ物を作成する歯科材料は薬事法第2条4項に規定する「医療機器」に該当するが,補てつ物については「医薬品等」には該当せず薬事法の規制の対象外とされている。すなわち,「雑貨(雑品)」扱いとなっている。
 2 歯科技工海外委託の実態(保団連アンケート結果)
(1) はじめに
  歯科技工海外委託の実態や海外委託仲介業者の実態については,訴状第3項(6頁乃至10頁),原告準備書面(1)第3項2(13頁乃至17頁)で論じている。本項ではそれに加えて,保団連が平成20年5月末から6月末の間に実施した「保団連海外技工物緊急調査」(以下「保団連調査」という。)に基づき,歯科技工の海外委託の実態を明らかにする。なお,保団連は,上記調査結果について保団連報告書(甲39号証)にまとめている。以下で引用している頁は,同報告書の該当頁である。
(2) 調査目的等
  保団連調査の目的は,日本国内の海外委託技工の実態と海外委託技工に関する意見を把握することを目的として,平成20年5月末から6月末までの期間,全国保険医団体加盟の保険医協会・医会の役員・会員を対象に,「海外技工物についての緊急調査」票を送付する方法により,アンケート調査を実施した。回収数は,33都道府県保険医協会・医会の役員・会員2,138人である。これは,保団連会員数34,739人(平成20年6月1日現在)の6%弱に該当する(同報告書2頁)。
(3) 保団連報告書の内容(概要)
ア 8割以上の歯科医師が歯科技工士に委託している
  保団連報告書によれば,歯科医師の約7割近くが診療所内に歯科技工士がいないと回答しており,約84%が歯科技工の全部又は一部を診療所外の歯科技工士に委託している(同報告書3頁乃至4頁)。
イ 平成17年通達後に海外委託仲介業者のチラシが増加している
  保団連報告書によれば,約36%の歯科医師が歯科技工の海外委託に関するチラシを見たことがあると回答している。
  また,同チラシを見た時期については,90年代は1乃至2%程度であり,2001年から2003年にかけては,それぞれ0.8%(01年),1.4%(02年),4.8%(03年),4.9%(04年)と一桁台前半の割合であった。ところが2005年以降をみると,11.2%(05年),22.6%(07年),29.3%(08年)と二桁台へと急激に増加しており,しかも右肩上がりの増加傾向が見られる(なお,2008年は年度途中であること等から5.8%となっている)。
  2005年は,被控訴人(被告)国が歯科技工の海外委託を許容する平成17年通達(甲2号証)を発した年である。被控訴人(被告)国が平成17年通達を発したことを機に,歯科技工の海外委託を斡旋する業者のチラシが増加している事実が認められる。
ウ 保険給付の対象となる歯科技工物もチラシで取り上げられている
  チラシの中で紹介されている歯科技工物の種類を見ると,保険診療の対象となっている技工物も掲載されているのを見たという歯科医師が25.9%,保険と自費の両方の対象となる技工物も掲載されているのを見たという歯科医師が6.5%,両者を合わせると32.4%(全体では11.8%)である(同報告書5頁)。
  保団連報告書にも指摘されているとおり,被控訴人(被告)国は,歯科技工の海外委託に関しては公的医療保険給付は認められないという見解を明らかにしている。ところが,保険対象になる歯科技工物の海外委託を斡旋するチラシが配布されている実態がある。
エ 義歯・冠などが海外委託されている
  歯科技工の海外委託に関するチラシの中で紹介されている歯科技工物の種類については,「義歯」が一番多くて69.6%,次に「冠」が43.5%,「インプラント関係」が7.1%となっている。また,委託先国としては,圧倒的に中国が多く(66.2%),ついで東南アジアとなっている(10.4%)(同報告書5頁)。
オ 下請されていることを知らない歯科医師が過半数を超えている
  海外技工物が下請されているケースがあることを知らないとの回答が56.3%を占めている(同報告書6頁)。
  保団連報告書が指摘するとおり,この結果は,多くの歯科診療所が海外委託のチラシを見たことがあるが,斡旋業者を通しての委託技工がどのように行われているのかは把握していない実態を明らかにしている。
カ 平成17年通達後に下請されていることを知った歯科医師が増加
  保団連報告書によれば,海外技工物が下請に出されていることを知った時期について,90年代は,1.2%(91年乃至95年),5.5%(96年乃至00年),0.5%(01年),1.0%(02年),4.9%(03年),4.3%(04年)というように,2004年までは一桁台の割合であった。それに対して,2005年(平成17年)以降は,11.9%(05年),20.0%(06年),21.9%(07年)と,いずれも二桁台の割合であり,かつ,その割合も右肩上がりに増加している(同報告書7頁)。
  前記のとおり,平成17年には被控訴人(被告)国は,歯科技工の海外委託を許容する通達を出している。その通達を機に,増加していることが伺える。
キ 歯科技工の海外委託の実態
  保団連報告書によれば,6.5%の歯科医師が海外に技工物を委託したことがあると回答している。保団連報告書が指摘するとおり,海外技工に出していてもアンケートに答えていないケースや,下請で出されており把握していないケースがあることを考えると,実態はもっと多いと考えられる(同報告書8頁)。
ク 平成17年通達後歯科技工の海外委託が増加している
  また,海外委託を依頼した時期については,2004年までは一桁台であるのに対して(91年から95年は2.9%,96年から00年は4.4%,01年は3.7%,02年は0.7%,03年は2.2%,04年は2.2%),2005(平成17)年からは,二桁台で,かつ,右肩上がりとなっている(05年は19.1%,06年は19.9%,07年は21.3%)(同報告書8頁)。前記のとおり,平成17年には被控訴人(被告)国は,平成17年通達を出しているが,それを機に歯科技工の海外委託が増加していったことが伺える。
ケ 海外技工に関しても保険給付の対象となっている
  保団連報告書によれば,海外に技工を委託したケースのうち,保険対象とした場合が8.5%,保険と自費の両方とした場合が2.6%,両方合わせると約11%が公的医療保険給付の対象とされている(同報告書9頁)。
コ 義歯・冠などが海外に委託されている
  保団連報告書によれば,海外に委託している技工物の種類としては,圧倒的に「義歯」が多く(78.7%),ついで「冠」となっている(8.7%)(同報告書9頁)。
サ 海外委託物には材料等の明記がされていないのが多い
  保団連報告書によれば,海外で作成された歯科技工物について,国名,制作日時,技工所名,制作者名,材料等が明記されていたのか質問した。これに対して,一番高い割合を示した「材料」ですら24.0%にとどまっている(同報告書10頁)。保団連報告書が指摘するとおり,海外に委託された歯科技工物の安全性に関する問題が発生したとしても,追跡できない状況である。
シ 海外に委託した技工物に問題が生じている
  保団連報告書によれば,委託した者の多くは問題がなかったと回答しているが,委託した者の5%は,発注・送付・精算等のシステム上問題があったと回答している。また,製品について問題があったとの回答は,委託した者の11.3%である。価格については6割が満足していると述べているものの,24.1%が不満と答えている(同報告書11頁)。
  保団連報告書が指摘しているとおり,上記アンケート結果上は,システム・品質・価格等で問題が生じている件数はまだ少ないが,輸入経路の複雑さ,問題解決先の特定の困難さ,距離的時間的な問題,下請でなどで表に出てこない問題,再製時の責任の所在と退所など,日本国内の歯科技工の対面取引とは比べものにならない問題を多く抱えている。
ス 海外委託物が「雑貨」として輸入されている
  保団連報告書によれば,海外での歯科技工物が「雑貨」扱いされていることを知っているのは,全回答社の15%程度であり,回答者の69.1%は知らないと回答している(同報告書12頁)。
  海外で作成された歯科技工物が「雑貨」扱いされていることから,「医薬品等」としての材料等の安全性が問えないこととされているが,それについて納得いかないとの回答が50%を超えている(同報告書13頁)。
セ 海外歯科技工物を歯科医師の責任で扱うというのは不適切である
  保団連報告書によれば,厚生労働省が平成17年通達で,海外で作成された歯科技工物について歯科医師の責任で扱うとされていることについて,63.2%が知らないと回答し,56.3%が不適切と回答している(同報告書13頁)。     
3 歯科技工海外委託仲介業者の実態
  歯科技工海外委託仲介業者の実態については,原審における原告準備書面(2)13頁乃至14頁で論じているが,そこでの特徴点として,平成17年通達により海外委託が許容されたと大々的に宣伝している実態がある。
(1) 有限会社〇〇〇〇(以下「〇〇〇〇」という。)は,表紙に大文字で「海外技工物も医師の裁量権でOK」「薬事法クリアー」と書かれており,また,「薬事法について」「行政の見解」と題して,平成17年通達を紹介している。それにより,歯科技工の海外委託は,平成17年通達により許容されたと宣伝している(甲8号証)。
(2) 株式会社△△△△△△△△△△△(以下「△△△△△△△△△△△」という。)は,案内文の中で,「国が歯科技工物海外発注…を認めた事によって,私どもは本格的な技工物海外発注事業を行うべき新会社,株式会社△△△△△△△△△△△…を設立しました。」と述べ,平成17年通達が歯科技工の海外委託を認めたこと,そのことを機に本格的に歯科技工の海外委託に取り組むために新会社を設立したことを明言している(甲22号証の2)。
(3) 株式会社□□□□□(以下「□□□□□」という。)は,歯科医院向けの説明文の中で,「平成17年9月,厚生労働省より『国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて』(医政歯発第0908001号)が通知されました。これは,『××××××××××』の取り扱いに関する公式見解と理解出来,『国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて』下記7点につき,医院様が患者様に対し十分な情報提供を行い,患者様の理解と同意を得,良質かつ適切な歯科医療を行えば何ら問題無いと認められたと理解できます。」「また,医院様の輸入する国外で作成された補てつ物の輸入代行業務を,弊社が行う事は何ら問題無いとの回答は既に東京都,保健所より得ています。」と説明している(甲23号証の1)。××××××××××とは,□□□□□の海外歯科技工物の名称である。すなわち,平成17年通達により,の□□□□□海外歯科技工物である「××××××××××」は公式に何ら問題は無いと認められたものであるということを大々的に宣伝している。
(4) 上記事例に見られるように,歯科技工の海外委託を仲介している業者は,被控訴人(被告)国の平成17年通達をもって「国が歯科技工海外発注を…認めた」(△△△△△△△△△△△の上記説明文)としており,そのことを歯科技工の海外委託を勧誘する宣伝物の中で大々的に論じている。その勧誘に応じて,歯科技工の海外委託を実施するに至っているのである。
  
第3 歯科技工の海外委託の違法性
1 歯科技工海外委託の問題点
(1) 歯科技工の海外委託の問題点については,すでに訴状において,@無資格者による歯科技工が行われていること,A指示書の交付・保存が行われていないこと,B歯科技工所への指導監督を行うことができないこと,C安全性が確保されていないこと,D仲介斡旋業者が事実誤認をもたらしかねない広告で誘因していることなど指摘している(訴状6頁乃至10頁)。
  また,原告準備書面(3)では,アメリカにおいて,中国で作成された歯科技工物から鉛が検出されて患者が被害を被った事例を紹介しているが(同書面17頁乃至22頁),歯科技工の海外委託の上記仲介業者の委託先はいずれも中国である。したがって,C安全性の確保の点に関しては,日本においてもその安全性が害される蓋然性が極めて高いということできる。
(2) これら原審で指摘した点に加え,前記保団連による歯科技工海外委託の実態調査結果から,次のような問題点が明らかになった。
ア 平成17年通達が歯科技工の海外委託を誘発し促進したこと
  保団連報告書によれば,歯科技工の海外委託に関するチラシを見た時期や,実際に歯科技工の海外委託を行った時期に関して,平成17年を機に,急速に右肩上がりに広がりつつある実態が明らかになった(前記第2項2(3)イ・カ・ク)。しかも,前記仲介業者らは,平成17年通達により国が歯科技工の海外委託を許容したのであるから法的には全く問題がないと大々的に宣伝している(前記第2項3(1)乃至(4))。
  すなわち,被控訴人(被告)国が平成17年通達により歯科技工の海外委託を許容したことにより,歯科技工の海外委託が誘発され,促進されたということができる。
  保団連報告書も「平成17(2005)年9月8日付厚労省通達『国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて』(平成17年通達)以来,海外技工物の宣伝及び制作依頼が急速に増加しており,その大半は中国及び東南アジア方面のものであることが明らかになった。同調査では,実際に海外技工委託を行った歯科医院は多くはないが,技工所が下請けを出している例も少なからず見受けられ,技工の下請けについて歯科医院は関知できていないと思われる。斡旋業者の海外技工の宣伝物では,価格が国内技工価格の半値以下であり,歯科医院の技工の外注比率が7割を超え,低い保険点数や金属材料の逆ざやが続いていることを考えると,技工物の海外委託が更に広まる条件が広範にある。」と総括している。
  このような,技工物の海外委託が広まる条件を作った契機が,被控訴人(被告)国の平成17年通達にある。
イ 安全性の保障が全くないこと
  被控訴人(被告)国は,平成17年通達において,歯科医師に対して,@当該補てつ物等の設計,A当該補てつ物等の作成方法,B使用材料(原材料),C使用材料の安全性に関する情報,D当該補てつ物等の科学的知見に基づく有効性及び安全性に関する情報,E当該補てつ物等の国内外での使用実績等,Fその他,患者に対し必要な情報を提供することを指導している(甲2号証)。
  しかしながら,保団連の前記調査によれば,国名,制作日時,技工所名,制作者名,材料等が明記されておらず,ほとんど業者任せでそれらの情報開示はほとんど行われていない(前記第2項2(3)サ)。しかも,歯科技工士が下請けに出していることを知らない歯科医師が過半数を超えている(前記第2項2(3)オ)。それゆえ,歯科医師による情報提供が適切に行われているのか甚だ疑問である。
  また,海外歯科技工物は「雑貨」として輸入されるなど薬事法の規制はないし(前記第2項2(3)ス),日本の歯科技工の海外委託先である中国,東南アジア諸国は(前記第2項2(3)エ),日本に準じた技工士養成機関,技工士資格制度,技工所施設基準,金属・材料の規格等がなく,歯科材料に関しても,技術に関しても,環境衛生の面でも安全性を担保するものはない。したがって,ひとたび金属アレルギーや鉛などの有害物質の混入などの問題が生じた場合の追跡調査の手だてがなく,海外委託技工物の安全性の保障は全くない(保団連報告書36頁)。
ウ 歯科技工士制度の崩壊
  保団連報告書では,海外委託技工物は,歯科技工士資格,施設,材料が問われず,そのためコストダウンが可能である一方で,日本国内の歯科技工は,厳しい基準をクリアーせねばならないなど,不当な競争に晒されている。
  不当で不公平な海外技工物の廉売による実勢価格の低下は,日本政府に更なる低医療費への口実を与え,日本国内の歯科技工はその経済的基盤を失い,歯科技工士の離職や歯科技工学校の閉校など,歯科技工士の人材の不足が一層進み,日本国内の歯科技工供給体制の崩壊は加速する。その結果,ますます海外委託にさらに傾斜せざるをえなくなり,歯科医療崩壊が一層すすみつつあると指摘されている(同報告書36頁)。
2 歯科技工海外委託の違法性
  歯科技工の海外委託には,前記のとおり多くの問題点が認められるが,それらは次のとおり,歯科技工士法等の法令に違反し違法である。
(1) 無資格者により歯科技工が行われていることは,無資格者による歯科技工を禁じた歯科技工士法17条の趣旨に反し違法である。
(2) 指示書の交付・保存が行われていないことは,指示書によらない歯科技工を禁止し(同法18条本文),指示書保管義務を負わせている(同法19条)の各規定の趣旨に反し違法である。
(3) 歯科技工の海外委託では,技工を行っている場所に対する指導監督を及ぼすことはできない。それは,歯科技工所の「所在地」の都道府県知事に届け出ることで歯科技工所を開設し,同知事を通して指導監督を及ぼそうとしている法(同法21条乃至27条の2)の趣旨に反し違法である。
(4) 歯科技工の海外委託では,前記のとおり,安全性の保障が全くない。
  そもそも,歯科技工士法の目的は,「歯科技工士の資格を定めるとともに,歯科技工の業務が適正に運用されるように規律をし,もって歯科医療の普及及び向上に寄与すること」にある(歯科技工士法1条)。また,歯科医師法の目的は「歯科医師は,歯科医療及び保健指導を掌ることによって,公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保する」ことにある(歯科医師法1条)。したがって,歯科技工の業務が適正に運用されることが歯科医療の向上,さらに公衆衛生の向上及び増進に寄与し,もって「国民の健康な生活」を確保することへと連なる。「国民の健康な生活」の確保には,安全な歯科治療の実現も含まれている。それゆえ,歯科技工業務においては,なによりも安全性の確保が不可欠である。ところが,歯科技工の海外委託では,安全性の保障が全くないのであるから,歯科技工士法1条,歯科医師法1条に反し違法である。
(5) 歯科技工士法26条は,「歯科技工の業又は歯科技工所に関しては,文書その他いかなる方法によるを問わず,何人も,次に掲げる事項を除くほか,広告をしてはならない。」と定め,@歯科医師又は歯科技工士である旨,A歯科技工に従事する歯科医師又は歯科技工士の氏名,B歯科技工所の名称,電話番号及び所在の場所を表示する事項,Cその他都道府県知事の許可を受けた事項を除く広告が禁止されている。
  前記のとおり,歯科技工の海外委託を仲介斡旋する業者らは,「歯科医師の業…に関して」,歯科医師又は歯科技工士に対する説明文やリーフレット等の「文書」により「広告」をしている。これらの広告では,上記@乃至Cの事項に限ってのみ広告が認められているにもかかわらず,前記仲介業者らは,上記@乃至C以外の事項についても広告をしている。したがって,歯科技工の海外委託の仲介業者の広告は,歯科技工士法26条に反し違法である。
(6) 日本国内においては,歯科技工士制度の下で無資格者による歯科技工などが厳しく規制されている。ところが,海外に委託する場合には,無資格者による歯科技工も許容されている。被控訴人(被告)国のこのような異なる扱いを合理化できる理由はない。それゆえ,被控訴人(被告)国が,日本国内と海外とで異なる取扱をしていることは,平等原則(日本国憲法14条)に反し違法である。

第4 公法上の当事者訴訟(確認訴訟)
1 はじめに
  前記のとおり,歯科技工の海外委託は歯科技工士法,歯科医師法等に照らして違法性が認められるが,被控訴人(被告)国は,この違法な歯科技工の海外委託を許容し,誘発し,促進している。そして,かかる国の行為により控訴人(原告)ら個々人の「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」への脅威が生じている。そこで,控訴人(原告)らは,本件訴訟において,海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利があることの確認を求める訴訟を提起するとともに,上記国の違法行為により精神的損害を被ったとして,国賠法1条に基づく損害賠償訴訟を提起したのである。
  これに対して,原判決は,公法上の当事者訴訟(確認訴訟)については法律上の争訟性,確認の利益を否定し訴えを却下するともに,国賠請求については,請求を棄却した。
  そこで,本項では,前記で述べた歯科技工の海外委託の実態を踏まえながら,原判決の不当性を批判するとともに,控訴人(原告)らの請求が認容されるべきことを論じる。
2 「歯科技工士としての法的地位」に関する判断の誤り
(1) 原判決は,原告ら歯科技工士の法的地位について,「業務独占の結果として一般に歯科技工士が安定的に業務の委託と報酬を受け得るという経済的利益」と判示している。
(2) しかし,原告ら歯科技工士の法的地位を,「安定的に業務の委託と報酬を受け得るという経済的利益」とのみに限定して解するのは,「歯科技工士としての地位」の内実をあまりにも矮小化するものであり,その利益のとらえ方として不正確である。
  業務に従事する歯科技工士は,厚生労働省に備えられている歯科技工士名簿に「登録」(同法6条,同法7条1項)することで厚生労働大臣から「免許」が付与され(同法3条,同法7条1項),都道府県知事に対して「届出」ることにより(同法7条3項)歯科技工士としての業務に従事することができる。個々の歯科技工士は,歯科技工士法に則り,被控訴人(被告)国から「免許」が与えられることにより歯科技工士としての資格(地位)が認められている。そして,そのように歯科技工士資格を付与された歯科技工士に対して,歯科技工業務を独占的に行うことができる地位を保障している(同法17条1項)。
  その目的は,無資格者による補てつ物等の作成を禁じることで,粗悪な補てつ物等が作成されることを防止し,国民の健康と安全を守ろうとしたからである(歯科技工士法17条,同法1条,歯科医師法1条)。
  そして,前記歯科技工の海外委託の実態等に照らすならば,この法の目的を現実に実現するためには,単に制度として歯科技工士の業務独占を保障するだけではなく,個々の歯科技工士に対して「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」を保障することは不可欠であるし,それが歯科技工士法17条,同法1条,歯科医師法1条の趣旨・目的にも適合する。
(3) 以上から,控訴人(原告)ら歯科技工士は,歯科技工士法17条,同法1条,歯科医師法1条に基づき,「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」が保障されているのであり,それは,一般公益に解消されることなく,個々の歯科技工士に認められた具体的な「法律上の利益」と解するべきである。そして,歯科技工の海外委託により当該利益に対する脅威が生じている以上,控訴人(原告)らには,当該利益を内実とする「海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利」が認められるべきである。
  この点,原判決は,歯科技工士の法的地位に関して誤った判示をしており不当である。
3 海外委託問題を合理的裁量の範囲内の問題としたことの誤り
(1) 原判決は,歯科技工の海外委託に関して,国が具体的な規制を行うにあたっても,その具体的措置の方法・内容については,当該行政庁の「合理的な裁量」に委ねられていると判示している。
(2) しかし,歯科技工の海外委託については,前記のとおり,無資格者による技工(歯科技工士法17条1項),指示書に基づかない技工(同法18条),広告制限違反(同法26条),安全性の保障がないこと(同法1条,歯科医師法1条)など歯科技工士法や歯科医師法に違反する違法なものである。
  ところが,前記のとおり,国は,平成17年通達で歯科技工の海外委託を許容することや(作為),違法な状態があるにもかかわらず調査もせず,指導等も行わずに放置すること(不作為)により,歯科技工の海外委託を誘発し促進させている。また,国内外で無資格者による歯科技工等への対応について歯科技工が日本国内で行われるのか海外で行われるのかにより異なる取扱をしている。これは,日本国憲法14条の平等原則違反に該当し,この点でも違法である。
  被控訴人(被告)国に合理的な裁量が認められるにしても,違法な行為を行うことまで許容する裁量が認められるわけではない。被控訴人(被告)国が平成17年通達で歯科技工の海外委託を許容し,あるいは違法な海外委託を放置することにより,違法な歯科技工の海外委託を誘発・促進させたことは,裁量権の濫用乃至は逸脱として違法である。
  したがって,被控訴人(被告)国に一般的に合理的裁量があるからといって,本件についてそれを根拠に正当化することは許されない。
4 法律上の争訟性を否定した判断の誤り
(1) 原判決は,本件確認の訴えについて,「歯科医師による歯科技工の海外委託及び補てつ物等の輸入使用は禁止されるべきとの解釈ととるべきことの確認を求めるに帰する」と判示する。
(2) しかし,本件確認の訴えは,歯科技工士法の解釈内容の確認を求めているものではない。
  前記のとおり,控訴人(原告)らは,被控訴人(被告)国から歯科技工士資格を直接付与された者として,「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」(歯科技工業務の独占的地位)が認められている。そして,この地位は,個々人の具体的利益として控訴人(原告)ら個々の歯科技工士に対して付与された「法律上の利益」である。
  ところが,本件では,違法な歯科技工の海外委託に対して,被控訴人(被告)国が平成17年通達によりそれを許容し(作為),あるいは放置する(不作為)により,違法な歯科技工の海外委託が誘発・促進されている。このことは,前記保団連調査により明らかである。そして,そのことにより,控訴人(原告)ら個々人に法律上保障されている「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」に対して脅威を及ぼしている。そのような実態を踏まえた場合,歯科技工の海外委託に対する被控訴人(被告)国の上記作為及び不作為がいずれも違法であり,かつ,控訴人(原告)らには海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利があることが確認されるならば,被控訴人(被告)国としては,違法な歯科技工の海外委託について禁止するなど適切な指導等を行うことが期待できるし,それにより控訴人(原告)ら個々の歯科技工士の「歯科技工業務の独占的地位」への脅威が解消され,同地位が確保されることになる。
  本件訴訟は上記のことを求めているのであるから,「当事者間の具体的な権利義務乃至法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,法令の適用により終局的に解決することができるもの」といえる。それゆえ,法律上の争訟性が認められる。
5 確認の利益を否定した判断の誤り
(1) 原判決は,控訴人(原告)が主張する確認の利益は法令上の「解釈」の問題であり「事実上の利益」に過ぎないこと,本件では「具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する法律上の紛争」が想定できないこと,仮に確認をしたとしてもそれにより「被告の所轄行政庁の裁量に係る具体的な行政上の措置を経ることなく直ちに除去されるもの」ではないと判示している。
(2) しかし,原判決の上記判断は、以下の理由により誤っている。
ア 本件確認の訴を単に「法令の解釈」の問題であり、その解釈に基づき「事実上の利益」を求めるものであると述べるが、それが誤りであることは、すでに前記で述べたとおりである。
イ 原判決は,「具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する法律上の紛争」が想定できないこと,仮に確認をしたとしてもそれにより「被告の所轄行政庁の裁量に係る具体的な行政上の措置を経ることなく直ちに除去されるもの」ではないと述べる。
  しかし,法律上の争訟性でも述べたが,歯科技工の海外委託に対する被控訴人(被告)国の上記作為及び不作為がいずれも違法であり,かつ,控訴人(原告)らには海外委託による歯科技工が禁止されることにより歯科技工士としての地位が保全されるべき権利があることが確認されるならば,被控訴人(被告)国としては,違法な歯科技工の海外委託について禁止するなど適切な指導等を行うことが期待できるし,それにより控訴人(原告)ら個々の歯科技工士の「歯科技工業務の独占的地位」が確保されることになる。
  したがって,本件確認の訴えが認められることにより脅威が除去されることになるのであるから,原判決の上記判示は誤りである。
ウ 以上から,本件では「判決をもって法律関係の存否を確定することが,その法律関係に関する法律上の紛争を解決し,当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切である場合」といえるのであるから,確認の利益が認められる。

第5 国家賠償請求訴訟
1 行政権限の積極的な行使における違法性(作為責任)
(1) 国賠法上の「違法」についての基本的な考え方
  国の行政活動は,法治主義の原則のもと,客観的な法規範に従って行われなければならない。したがって,国賠法上の「違法」とは,まず当該行政活動が客観的な法規範に従って適法に行われているのか違背しているのかを基本とすべきである。このことは,国家賠償制度に行政統制制度を認めることにも適合する(原田・要論287頁,塩野・行政法U289乃至290頁,兼子・行政法学205頁,宇賀・補償法61頁,西埜・賠償法157頁)。
(2) 義務違反的構成への批判
ア 原判決は,国賠法1条1項の「違法」について,「国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することをいうものと解するのが相当である」と判示する(以下,「義務違反的構成」という)。
  しかし,原判決が上記判断にあたり引用している最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁は,在宅投票制度に関するものである。これは「立法の不作為」という訴訟類型に属するものである。これに対して,本件では,被控訴人(被告)国の不作為責任だけではなく,作為責任も問題となっている。
  すなわち,前記のとおり,被控訴人(被告)国が歯科技工の海外委託を許容する平成17年通達を出したことにより,違法な歯科技工の海外委託が誘発・促進されたという実態がある。したがって,本件では,歯科技工の海外委託を許容する平成17年通達を出した行為(作為)そのものの違法性が問題とされている。それゆえ,上記引用判例とは事案を異にする。
  このように,被控訴人(被告)国の作為責任の違法性が問題とされる場合に,端的に法規範に照らし端的に加害行為の違法性を問えば足りるのであり,あえて義務違反的構成を取らなければならない理由はないと批判されているが(室井力・芝池義一・浜川清「コンメンタール行政法U 行政事件訴訟法・国家賠償法第2版」533頁),その批判は,原判決に対しても妥当する。
  したがって,平成17年通達を出した行為は,歯科技工士法,薬事法等に違反し違法である。
イ また原判決は,歯科技工士法が歯科技工士に業務独占の規制を設けているのは,「一般的公益」としての公衆衛生の保持を目的とするものであり,「個々の技工士に対し,その個別的利益として何らかの法律上の利益」を認めているものではないし,「国に対し当該規制に係る措置につき何らかの請求等をし得る権利」を認めているものでもないと判示している。
  しかし,前記のとおり,控訴人(原告)ら歯科技工士の法的地位を,「安定的に業務の委託と報酬を受け得るという経済的利益」とのみに限定するのではなく,端的に歯科技工士資格を有する者に対して保障されている「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益」(歯科技工業務の独占的地位)ととらえるべきである。
  そして,控訴人(原告)らに保障されている歯科技工業務の独占的地位は,前記のとおり,一般的公益に解消されず個々の歯科技工士に対する具体的利益として保障されたものである。
  歯科技工の海外委託は,前記のとおり,控訴人(原告)らの個々の歯科技工士の具体的利益である業務独占の地位を脅かしているのであるから,この点でも違法性が認められる。
(3) 義務違反的構成によっても違法である
  仮に国賠法1条の「違法」について義務違反的構成を取るとしても,控訴人(原告)ら個々人には,歯科技工士業務の独占的地位が保障されており,かつ,それは個々人の具体的な「法律上の利益」である。被控訴人(被告)国は自ら個々の歯科技工士に対して資格を付与し,歯科技工士の業務独占を認めたのであるから,被控訴人(被告)国は歯科技工士である原告らに対して,歯科技工業務の独占的地位を脅かしてはならない職務上の義務を負っているといえる。ところが,被控訴人(被告)国は平成17年通達を出すことにより,この職務上の義務に違反して原告らの業務独占的地位を脅かしたのであるから,国賠法1条の「違法」性が認められる。
2 行使権限の不行使における違法性(不作為責任)
(1) 原判決
  原判決は,「業務独占の規制に違反する行為が禁止される結果,歯科技工私法上又は条理上,所轄行政庁においてその違反の有無について調査し,その結果に基づいて違反行為を止めるように指導することが求められる」と述べている。すなわち,原判決は,歯科技工の海外委託に関して,被控訴人(被告)国は,歯科技工士法,薬事法等関連法令に照らして,その違反の有無について調査をすべき義務があること,その調査結果に基づき違反行為を止めるように指導等を行うべき義務があることを認めている。
  しかし,原判決は,かかる義務は,所轄行政庁が「個々の歯科技工士に対して負担する職務上の法的義務」には当たらないとして,「違法」性を否定している。
(2) 歯科技工業務の独占的地位は個々の歯科技工士に保障された具体的利益である
  前記のとおり,控訴人(原告)ら歯科技工士に保障されている歯科技工業務の独占的地位は,単なる一般的公益に解消されるべきものではなく,個々の歯科技工士に保障された具体的な利益である。この地位は,被控訴人(被告)国が個々の歯科技工士に対して,歯科技工士としての資格を付与し,かつ,歯科技工の業務独占を認めたことにより保障されたものである。したがって,被控訴人(被告)国は,個々の歯科技工士に対して,歯科技工業務の独占的地位を脅かすことが禁じられているとともに(作為責任),歯科技工業務の独占的地位を脅かすおそれのある場合には,その違反の有無を調査し,調査結果に基づき脅威とならないように指導等を行うべき義務を負っているといえる(不作為責任)。
  しかもその義務は,個々の歯科技工士の具体的な利益を保護するものであるから,「個々の歯科技工士に対して負担する職務上の法的義務」ということができる。
  本件では,被控訴人(被告)国は,本件訴訟提起後に調査を外部機関に委託する前まではその実態調査すらも行ってこなかったのであるから,調査義務に違反している(なお,現時点でも調査の準備は進めているものの,調査には着手していないと思われる)。しかも,たとえば歯科技工の海外委託業者による広告規制違反を知り,あるいは容易に知り得たにもかかわらず,当該業者に対する指導等を行うなどしていない。それにより,個々の歯科技工業務の独占的地位が脅かされるに至っているのであるから,「違法」性が認められる。
3 小括
  以上のとおり,本件では,被控訴人(被告)国の作為及び不作為による違法が認められる。それにより,歯科技工業務の独占的地位が脅かされ,原告らは将来に対する不安等多大な精神的苦痛を被っている。その苦痛を金銭に現すならば,少なくとも100万円は下らない。
  よって,被控訴人(被告)国に対して,国賠法1条1項に基づき,慰謝料各100万円のうち10万円及び遅延損害金の支払いを求める。

第6 まとめ
  以上のとおり,原判決は不当であるから破棄され,控訴人(原告)らの請求が認容されるべきである。



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