上告人 脇本征男 外79名
被上告人 国
上告理由書
2009(平成21)年12月22日
最高裁判所 御中
上告人ら代理人 弁護士 工藤勇治
同 弁護士 川上詩朗
同 弁護士 岩崎泰一
第1 はじめに
1 上告人らには「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益について国から不合理な差別を受けない権利(平等権)」(日本国憲法第14条1項・同25条1項)が憲法上保障されている。上告人らは控訴審において,国の対応は上告人らの上記権利の侵害である旨主張した。しかし,控訴審判決は,その点について何も判断していない。これは,理由不備にあたる。
2 また,控訴審判決は,上告人らの請求に対して,「具体的利益がない」として,公法上の当事者訴訟に関しては請求を却下し,国賠請求に関しては請求を棄却している。しかし,本件では国の対応により上告人らの上記平等権が侵害されている。したがって,控訴審判決は,日本国憲法第14条1項に違反乃至は同条項の解釈を誤ったものである。
したがって,控訴審判決は破棄され,上告人の請求が認められるべきである。
以下,順次論じる。
第2 歯科技工業務を独占的に行うことができる利益(日本国憲法第25条1項)
1 はじめに
歯科技工士法第17条1項は「歯科医師または歯科技工士でなければ,業として歯科技工を行ってはならない。」と定める。この規定による歯科技工士資格を有しない者(無資格者)による歯科技工が禁じられた結果,歯科技工士には,歯科技工業務を独占することができる利益が認められた。この利益に関しては,歯科技工士法第17条1項の趣旨について日本国憲法第25条1項および同法第14条1項を合わせ解釈することにより,歯科技工士には,歯科技工業務を独占的に行うことができる利益について「国内外で差別されない権利」が憲法上保障されていると解するべきである。
以下では,まず歯科技工業務を独占的に行うことができる利益が日本国憲法第25条1項から導かれる国民の「適正かつ安全な歯科医療を受ける権利」から導かれる利益であることを論じた後,項をあらためて,当該利益には国内外で差別されない権利が含まれていることを論じる。
2 健康を享受する権利(健康権)
(1) 社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)等
「健康」が基本的人権であることは,1948年の世界保健機構(以下「WHO」という。)憲章で謳われて以来,国際社会において繰り返し確認されている。
すなわち,上記WHO憲章前文は「すべての人が到達可能な最高水準の健康を享受することは基本的人権の一つである。」と謳っている。また,同年採択された世界人権宣言は,「すべての人は,衣食住,医療および必要な社会的施設等により,自己および家族の健康及び福祉に十分な生活水準を保持する権利…を有する。」(世界人権宣言第25条1項)と規定する。
また,1978年発効した経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第12条1項は「この規約の締結国は,全ての者が到達可能な最高水準の身体および精神の健康を享受する権利を有することを認める。」と規定している。この条項は,世界で初めて「健康を享受する権利(健康権)」を国際法的に効力ある公式文書で規定したものとされている(伊藤ちぢ代「国際機構の諸文書における『健康権』概念について」日本大学大学院総合社会情報研究科紀要第7号476頁)。日本国は,1979年9月,上記社会権規約を批准していることから,日本国が「健康権」を保持すべき責任のあることは明らかである。
なお,国際社会においては,WHOのアルマ・アタ宣言(1978年),第1回ヘルスプロモーション会議でのオタワ憲章(1986年),第2回同会議でのアデレード勧告(1988年),第3回同会議でのサンドバール宣言(1991年),第4回同会議でのジャカルタ宣言(1997年),第5回同会議でのメキシコ宣言(2000年)等で「健康」が基本的人権であり,健康権保障の責任は国家にあることが繰り返し述べられている。
(2) 日本国憲法第25条1項および2項
日本国憲法第25条は,「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(1項)」「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(2項)」と定める。これらの規定は,上記社会権規約等とあいまって,国民に対して「健康を享受する権利(健康権)」を保障したものである。
3 適正かつ安全な歯科医療を受ける権利
「健康とは,完全な肉体的,精神的および社会的に良好な状態であり,単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」とされている(WHO憲章前文)。本件は歯科医療に関する問題であるが,適正かつ安全な歯科医療が保障されてこそ,国民の健康が保たれる。したがって,国民には,「適正かつ安全な歯科医療を受ける権利」が「健康を享受する権利(健康権)」から導かれる具体的な権利として憲法上保障されている。
4 歯科技工業務を独占的に行うことができる利益
(1) 歯科医師法第1条は,歯科医師は,歯科医療および保健指導を掌ることによって「公衆衛生の向上および増進に寄与」し,もって「国民の健康な生活」の実現を目的としている。歯科医師法は,日本国憲法第25条1項および2項を受けて規定されたものである。したがって,歯科医師法を解釈するにあたっては,日本国憲法第25条1項および2項と関連させて一体のものとして解釈すべきである。
そうだとすれば,ここに「国民の健康な生活」とは国民一般の健康という公衆衛生にとどまらず,国民個々人に認められた憲法上の権利である「適正かつ安全な歯科医療を受ける権利」を実現することも含まれていると解するべきである。
(2) 歯科技工士法第1条は,「歯科技工士の資格」を定めるとともに,「歯科技工の業務が適正に運用」されるよう規律し,もって「歯科医療の普及および向上に寄与する」ことを目的としている。
その趣旨は,歯科技工の業務は,高度な技術と知識を必要とする専門的なものであるにもかかわらず,従来から何らの規制も行われずに野放しの状態であった。そのため,粗悪な補てつ物,充填物,矯正装置等が作られ,歯科治療に多大の支障を与えていた。そこで,歯科技工士の資格を定めてその資質の向上を図るとともに,歯科技工の業務が適正に運用されるように規律し,歯科医師の業務を適正に補足させることにより,歯科医療の普及及び向上に寄与することにある(甲2号証)。
(3) 歯科技工士制度の具体的内容は,次のとおりである。
ア 歯科技工とは,「特定人に対する歯科医療の用に供する補てつ物,充てん物又は矯正装置を作成し,修理し,又は加工すること」(ただし,歯科医師がその診療中の患者のために自ら行う行為を除く)をいう(法2条1項)。前記のとおり,歯科技工は,高度に専門的な知識と技能を必要とするものであることから,それを野放しにすると粗悪品が生じ,患者の健康を害する危険性がある。そこで,法は,歯科技工士としての必要な知識及び技能について試験を行い(法11条),その試験に合格した者に対して厚生労働大臣が免許を与え(法3条),その免許を有する歯科技工士でなければ業として歯科技工を行ってはならないとし(法17条1項),それに違反した者に対しては刑罰を課すとした(法28条1号)。これにより,専門的知識と技能を有する歯科技工士に歯科技工の業務を独占させ,無資格者による歯科技工を禁じることにより,「国民の適正かつ安全な歯科治療を受ける権利」を保障しようとしたのである。
この法の趣旨に照らせば,無資格者による歯科技工の禁止は歯科技工士制度の根幹をなす重要な法的要請であり,歯科技工が行われた場所が国内か海外かで異なる取扱をすべきではない。
イ また,補てつ物等を装着することを伴う歯科治療は,通常,歯科医師が特定の患者の補てつ物等の作成を歯科技工士に指示をし,歯科技工士は歯科医師の指示に従って補てつ物等を作成し,歯科医師はその作成された補てつ物等を患者に装着させるというプロセスを経て行われる。従って,そもそも歯科医師の指示がなければ歯科技工を行うことができず,歯科医師の指示は歯科技工にとって必要不可欠なものである。そこで法は,歯科医師の指示が確実に行われ,歯科技工の業務が適正に運用されるために,指示書がなければ業として歯科技工を行ってはならず(法18条本文。但し,病院又は診療所内の場所において,かつ,患者の治療を担当する歯科医師の直接の指示に基づいて行う場合はこの限りでない。),その違反者に対しては刑罰を課すこととした(法32条2号)。また,歯科技工の業務が必ず指示書に基づき行われることを確保するとともに,歯科技工の業務が指示書の通り行われたかどうかを後日確認できるように,歯科技工所等の管理者に指示書の保管義務を求め(法19条),その違反者に対しても刑罰を課すこととした(法32条3号)。
この法の趣旨に照らせば,歯科医師から指示書が交付され,かつ,保存されることは,歯科技工士制度の根幹をなす重要な法的要請であり,それについて歯科技工が行われたのが国内か海外かで異なる取扱をするべきではない。
ウ また,法は歯科技工所に関する規定を設けている。すなわち,歯科技工所を開設した者は,管理者の氏名等を「歯科技工所の所在地の都道府県知事」に届け出るものとし(法21条1項),歯科技工所には管理者を置かなければならず(法22条),都道府県知事は,歯科技工所の構造設備が不完全であり,当該歯科技工所で作成等した補てつ物等が衛生上有害なものとなるおそれがあると認めるときは,その開設者に対して,相当の期間を定めて,その構造設備を改善すべき旨を命ずることができるとし(法24条),その命令に従わないときは,開設者に対して歯科技工所の使用を禁ずることができ(法25条),さらに都道府県知事は,必要があると認めるときは,歯科技工所の開設者若しくは管理者に対し,必要な報告を命じまたは当該吏員が立入検査することができる(法27条1項)など行政機関による一定の監督権を認めている。これらの規定は,歯科技工の業務が適正に運用されるためには,歯科技工士の身分(資格)と業務について規制するだけではなく,歯科技工所という施設の面からも規制を行うことが不可欠であるとの理由から設けられたものである。とりわけ,歯科技工所の開設は,歯科技工所の「所在地」の都道府県知事に届け出なければならないとされている(法21条)。すなわち,法は「所在地」の都道府県知事に対する届出により開設された歯科技工所においてのみ歯科技工を行わせるということを予定しているのであり,それ以外の場所での歯科技工を禁じていると解するのが相当である。従って,歯科技工所は日本国内に設置されることを当然に予定しているとともに,監督権限が及ばない海外に歯科技工所を設置することを禁じていると解すべきである。
(4) 歯科技工士法に関しても歯科医師法同様に,日本国憲法第25条1項および2項を受けて規定されたものである。したがって,歯科技工士法を解釈するにあたっては,日本国憲法第25条1項および2項と関連させて一体のものとして解釈すべきである。
そうだとすれば,無資格者による歯科技工の禁止(歯科技工士法第17条1項)は,単に国民一般の健康増進という公衆衛生上の目的のみならず,個々の国民が憲法上の権利として保障されている「適正かつ安全な歯科医療を受ける権利」の実現のために設けられたものであると解すべきである。したがって,無資格者による歯科技工が禁止された結果,歯科技工士に認められた歯科技工業務を独占的に行うことができる利益についても,個々の国民の「適正かつ安全な歯科医療を受ける権利」から導かれた憲法上の規定に根拠のある利益であると解すべきである。
第3 国内外で差別されない権利(日本国憲法第14条1項)
1 はじめに
(1) 日本国憲法第14条1項は「すべて国民は,法の下に平等であって,人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において差別されない」と定める。この規定については,平等原則と平等権の二面性を持つと解されている(辻村みよ子「憲法第3版」183頁)。
そして,平等を原則として捉える場合には実体的権利を併せて主張することが前提となる(どのような権利・利益の平等が害されたのかを前提にしたうえでその差別的取扱の合理性を問題とする)のに対し,平等権のみを問題とする場合にはこれと異なる結果が生じる点に注意が必要と指摘されている(前掲書183頁)。両者の違いとして紹介されている例として,例えば,男女別定年制などの性差別を女性の平等権侵害として立論する場合には,単に「男性と差別されない権利」が害されたことが問題になるため,男女とも35歳定年制は14条違反ではないが,実体的権利を問題にして労働権に関する差別と捉える場合は,60歳前後まで平等に働く権利など,権利内容の吟味が必要となると指摘されている(前掲書183頁)。
(2) 平等原則を問題とした場合,本件では実体的権利(利益)である「歯科技工業務を独占的におこなうことができる利益」と併せて平等権侵害を論じる必要がある。
それに対して,平等権のみを問題とした場合,歯科技工業務を独占的に行うことができる利益については考慮することなく,端的に「国内外において差別されない権利(平等権)」の侵害が問題になる。
なお,差別については,常に他との比較が問題となる。性別による差別では男性と女性,人種による差別では各人種間の比較が問題となるが,本件では国内と国外という地域間の比較が問題とされている。
(3) 以下では,まず本件が歯科技工士に保障された平等権侵害であることを論じ,その後平等原則違反でもあることを論じる。
2 国内外で差別されない権利の保障
(1) 歯科技工士法が歯科技工士制度を設けた趣旨は,前記のとおり,歯科技工を野放しにすると粗悪品が横行し国民の健康が害される虞があることから,歯科技工士資格を設け,同資格を有しない者(無資格者)による歯科技工を禁じ(同法第17条1項),指示書に寄らない歯科技工を禁じる(同法第18条)等により,国民の「適正かつ安全な歯科医療をうける権利」を確保しようとしたのである。
この趣旨に鑑みるならば,前記のとおり,無資格者による歯科技工の禁止は歯科技工士制度の根幹をなす重要な法的要請であり,歯科技工が行われた場所が国内か海外かで異なる取り扱いをすべきではない。
(2) このように,無資格者による歯科技工の禁止について歯科技工が行われた場所が国内か海外かで異なる取り扱いをすべきでないことは,歯科技工士法第17条1項の趣旨そのものからも導かれるものである。
このように,無資格者による歯科技工の禁止の趣旨にはもともと国内外を問わず無資格者による歯科技工は禁じられるべきとの法的要請が含まれているが,日本国憲法第14条1項の平等権保障の趣旨も併せて解するならば,無資格者による歯科技工が禁止された結果,歯科技工士に認められる歯科技工業務独占の利益についても,国内外で差別されない利益(平等権)が含まれていると解することができるのであり,そうだとすれば,歯科技工士には歯科技工士法第17条1項および日本国憲法第14条1項に基づき,歯科技工業務を独占的に行うことができる利益について国内外で差別されない権利が保障されていると解するべきである。
3 国内外で差別されていること
前記のとおり,国は,国内においては,無資格者による歯科技工を禁じており,厳格にその運用を行っている。しかし,国外については,歯科技工の海外委託においては無資格者による歯科技工が行われている蓋然性が高いにもかかわらず,国は,無資格者が歯科技工を行うことを容認することを前提として,平成17年9月8日「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」と題する通達(平成17年通達)を発するのみであとは放置をして何らの手だてもせず,もっぱら歯科医師への責任に委ねている。
このように,無資格者による歯科技工に関する国の対応には,国内では厳格に禁じるのに対して国外では許容するという差別的取り扱いがなされている。その結果,無資格者による歯科技工が禁止された結果,歯科技工士に認められたところの,歯科技工業務を独占して行うことができる利益の保障に関しても,歯科技工が国内で行われる場合にはその利益が保障されているのに対して,国外で行われる場合にはその利益への脅威が生じるとの違いが生じている。
この異なる取り扱いについて,合理的理由がなければ,それは不合理な差別にあたる。そこで,次に合理性の有無について検討する。
4 合理性が認められないこと
(1) 歯科技工士法は,前記のとおり,無資格者による歯科技工を禁じることで粗悪品が流通するのを防ぎ,国民の健康を確保しようとしたのである。その趣旨は,国内外を問わず貫かれるべきである。したがって,原則として無資格者により歯科技工が行われている歯科技工の海外委託の場合,合理性が認められない。
(2) 他方,歯科技工士法は国外には適用されない。確かに,海外での歯科技工に同法を適用し,無資格者による歯科技工そのものを直接禁じることはできない。しかし,歯科技工が行われる場合には,@歯科医師の指示,A指示を受けた者による技工行為,B歯科技工物の歯科医師への交付,C歯科医師による歯科技工物の患者への装着というプロセスを必ず経る。このうち,歯科技工の海外委託の場合には,@BCはいずれも国内で行われる。したがって,前記歯科技工士制度の趣旨に鑑みるならば,歯科医師は無資格者に対して歯科技工を指示しないこと,無資格者により作成された歯科技工物を輸入を禁じること,無資格者により作成された歯科技工物を患者に装着しないことを,国内において歯科医師等に指導することは可能である。したがって,歯科技工士法は海外に適用されないことは,上記差別的取り扱いを合理化する理由にはなり得ない。
(3) また,国はこの差別的取り扱いを合理化する根拠として「当該行政庁の合理的裁量」を持ち出す(控訴審答弁書5頁)。しかし,行政庁の裁量が一般的には認められるとしても,裁量は絶対的無制限に認められるわけではない。行政庁の裁量といえども法律の範囲内で認められているものであるところ,歯科技工士法は前記のとおり無資格者による歯科技工を禁じているのであるから,無資格者による歯科技工が行われている海外での歯科技工を認めることは,授権された法(歯科技工士法)の範囲を逸脱するものといえる。したがって,「合理的裁量」があるからというだけでは,無資格者による歯科技工について,国内と海外とで異なる取り扱いをすることを合理化する根拠にはなり得ない。
5 平等権違反
その他無資格者による歯科技工について,国内外で差別的取り扱いをすることを合理化する理由は見あたらない。したがって,無資格者による歯科技工について,国内外で異なる取り扱いをすることは,「国内外で差別されない権利(平等権)」を侵害するものとして憲法違反である。
6 平等原則違反
(1) 本件では平等原則違反も認められる。
すなわち,上告人らには,「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益について国による不合理な差別を受けない権利」が保障されている。ここで「歯科技工業務を独占的に行うことのできる利益」は,前記のとおり,日本国憲法第25条1項に基づく国民の「適正かつ安全な歯科治療を受ける権利」(健康権)から導かれる憲法上の利益である。したがって,上記利益は極めて重要な利益であり,その利益を保障するにあたっては国内外で差別的取り扱いがなされてはならない。
(2) ところが,国は,国内では無資格者による歯科技工が厳格に禁止されているのに対して,国外での無資格者による歯科技工は容認している。しかも,前記のとおり,その異なる扱いを合理化する理由もない。したがって,かかる国の対応は,上告人に認められた「歯科技工業務を独占的に行うことのできる利益について不合理な差別を受けない権利」を侵害するものであり,平等原則に違反する。
第4 理由不備
1 控訴審での主張
前記のとおり,歯科技工の海外委託に対する国の対応は,上告人に保障された「歯科技工業務を独占的に行うことができる利益について不合理な差別を受けない権利(平等権)」(日本国憲法第14条1項)を侵害するものである。したがって,そのような平等権ないしは平等原則を内実とする歯科技工士の業務独占の地位の保全を侵害することであるから,その地位の保全の確認を求めるとともに,国賠法に基づく損害賠償請求を求めた(控訴人準備書面(1))。
2 控訴審判決の内容
しかしながら,控訴審判決は,上告人らの上記平等権および平等原則違反を理由とする主張について全く判断をせずに上告人らの請求を退けた。これは理由不備にあたる。
第5 憲法違反乃至は憲法解釈の誤り
前記のとおり,本件は平等権および平等原則違反が問題となる。ところが,控訴審判決はいずれも,平等権および平等原則違反であると認めることなく,上告人らの請求を退けた。したがって,控訴審判決には,憲法違反乃至は憲法解釈の誤りがある。
第6 まとめ
以上から,控訴審判決には,理由不備,日本国憲法第14条1項違反乃至は同条項の解釈の誤りが認められる。
したがって,控訴審判決は破棄され,上告人らの請求が認められるべきである。
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