9月13日 読売新聞朝刊 14面
よみうり時事川柳「中国製入れ歯で食べる偽ウナギ」横浜 石井 正俊
読売新聞の時事川柳に「中国製入れ歯で食べる偽ウナギ」というのが掲載されました。
今、「食の安心・安全」が問われ国民の関心ごとの一つとして大きな話題になっております。
社会がグローバル化、ボーダレス化しているなかで日本も多くの国から身の回りに海外製品が溢れる様になりました。
ある意味では、選択肢が増えるわけでとても喜ばしい事でもあります。
安くて良い製品を手にする機会が増えると言うわけですからね。
それを判断しているのは、消費者です。
自分で何処の商品でどういったものかを調べるなりブランドを信頼したりして判断しているわけです。
他方世間では、海外製品がらみの偽装ウナギ、事故米そして毒ギョーザ事件など
「食の安心・安全」に関して日本には今まで無かった危機的な状況に陥っています。
これは一体どういうことなのか?
「国民なんて馬鹿だから何もわからない?」
「知らなければ何をしても良い?」
それとも
「会社の経営が悪化したからやむなくやってしまった?」
「検査体制の不備?」
理由は、個別にいろいろあるでしょう。
そんな中の一つに我々が争っている「海外製の入れ歯」問題もまったく同じなんです。
あたかも海外から入れ歯が国内に入ってくる事は、「そういう時代、グローバル化」なんだよと。
「世界が海外製品を取り入れているんだよ」と。
果たしてそれでいいのでしょうか?
実は、日本には「歯科技工士法」というのがあります。
歯科技工士法というのは、世界にはほとんどありません。
日本固有の「法律」と言ってもいいでしょう。
日本国憲法が定義付けた制度で国民に「良質で安心・安全」な歯科治療を施すために
歯科医療制度の1つとして「歯科技工士法」をわざわざ昭和30年に制定したのです。
この「歯科技工士法」とは、簡単に言うと「入れ歯を作る行為に規制」をかけているのです。
ここで重要なのは日本では「歯科医師」と「歯科技工士」しか作ってはならんとなっているのです。
これに違反すれば1年以下の懲役か50万円以下の罰金刑となっております。
つまり「作る行為」にさまざまな規制をかけて入れ歯の「質の安心・安全」を「歯科技工士法」という資格制度において担保しているのです。
「海外製入れ歯」には、「歯科技工士法」はまったく適用されていません。
厚生労働省が17年にある「通知」を出しました。
この通知により実質上「海外製入れ歯」を認めてしまったのです。
誤解を招くといけませんからきちんと伝えますが
保険は、認めていません。
自由診療のみです。
ですがこの自由診療も患者さんに対して「説明(7項目)と同意」を得れば良いだけです。
1)当該補綴等の設計
2)当該補綴物等の作製方法
3)使用材料(原材料等)
4)使用材料の安全性に関する情報
5)当該補綴物等の科学的知見に基づく有効性及び安全性に関する情報
6)当該補綴物等の国内外での使用実績等
7)その他、患者に対し必要な情報
果たしてこの「説明と同意」は、どのような形でなされているのでしょうか?
同意書や説明書等書面でお互いが納得行く形で残しているのでしょうか?(通知では、なんら触れておりません)
単純に口頭での説明のみだとしたら・・・。
もしも何らかの健康被害にあったとしたらどのように対処するのでしょう?
この通知が17年に発せられて以降歯科業界では、大手を振って海外輸入歯科技工委託代行業者というのが多数現れました。
業界の者なら誰でも周知の事実です。
歯科技工所などには、ファックスで委託代行業者から広告が送られてきたのは1件や2件ではないでしょう。
ルートが確立してしまえば患者さんが解らなければ自由診療だろうが保険診療だろうが・・・。
この裁判を起こす直前までは、そんな感じだったのです。
誰も損しないんだから・・・
解らなければ・・・
楽して稼ごうよ・・・
真面目にやると馬鹿を見るよ・・・
私たちは、自分たちが特別目立つ行為を行っているなどとは思っていません。
本来なら個人でこのようなことをやることではないと思っています。
私達にも業界団体があります。
なんどもなんども業界団体を動かそうとしました。
そして今も動かそうと投げかけ続けています。
厚生労働省にも出かけ業界団体も動かそうとし、そして警察署にも行ったんです。
政治家にも説明をしてきました。
やるべきことは、すべてやりつくした。
最後に残ったものが「裁判で決着をつけるべき」と判断しただけです。
果たして国民にとってこのような状況のままで本当に良いのだろうか?と。
真実を伝えるべき事なのではないか?
一人の歯科技工士としてそして歯科医療人として歯科に携わる者として。
事故米にしてもそうですが国民に健康被害が起きなければ何をしても良いということではないでしょう。
9月5日の読売新聞記事より
http://soshougikoushi2007.seesaa.net/article/106057167.html『厚生労働省歯科保健課は「安全性は歯科医が責任を持って判断できるし、海外製義歯の危険が具体的に明らかになった例もない」と反論する』
このようなことを言うのならば「歯科技工士法」は、必要ありません。