厚生労働大臣 細川 律夫殿
医政局長 大谷 泰夫殿
医政局歯科保健課長 上條 英之殿
全国保険医団体連合会
歯科代表 宇佐美 宏
海外委託歯科技工問題についての要請
貴職の国民医療拡充のためのご尽力に敬意を表します。
本会は、表記の件で厚労省に対して2007年11月以来、本会で実施した海外委託歯科技工実態調査結果などをもとにして幾度か厚労省へ要請してきました。
さてご承知のように、本年2月のTBSテレビ「ネクスト報道」で、わが国では発がん性や呼吸器障害が指摘されて歯科材料として使用を禁止しているベリリウム金属が、中国の技工所に委託した歯科技工物より検出されたことが報じられました。同番組を契機にして、3月31日の衆議院厚生労働委員会、4月7日の衆議院消費者問題に関する特別委員会など国会でも歯科技工の海外委託問題が取り上げられました。
足立前厚労省政務官は、衆院厚生労働委員会(3/31)での質問に答えて、「第1段階として、歯科医師が国外へ歯科補てつ物の作製を委託する際に指示する内容(基準)、作成場所や使用材料等について基準を作成、周知する。」「10月末くらいを目途にトレーサビリティが確保されるような、歯科医師が遵守すべき事項を、これまた作成して周知したい。そのように考えております。」と答弁しました。
足立前政務官の答弁通り、3月31日付厚労省医政局歯科保健課長名で「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」(平成22年通知)が出されました。しかし同通知は、歯科技工についての国の責任を回避して委託歯科医師の責任に課し、安全性の面でも問題のある海外歯科技工物を横行させる「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(平成17年9月18日「平成17年通知」)を前提にしています。また、私どもが9月11日に行った「知っていますか?海外歯科技工問題」のシンポジウムの中で、歯科材料・歯科理工学研究者からは、口腔内金属が指示したものか否かを分析することは困難と指摘されています。そうした中での同通知は、指示内容と異なって事故が発生した場合の責任を委託歯科医師にのみ帰すものです。さらに歯科材料学・理工学研究者や食品問題研究者からは、「トレーサビリティの基準確立」は事故の再発防止には役だっても事故予防にはならず、安全で良質な歯科技工物の確保には、材料基準は薬事法で、製作等については歯科技工士法によって安全性と質の担保を図っているわが国の歯科技工士制度を維持・充実・発展させ、地域における歯科医師と歯科技工士の連携をさらに強めていくことが重要と指摘されています。
以上の点から、私達は貴職に対して次の施策の実現を強く要請します。
1,「平成17年通知」並びに「平成22年通知」を撤回し、海外に委託せずとも国内で必要な歯科技工物が確保できるようにすること。
2,歯科技工物の質と安全性を確保するため、「トレーサビリティーの基準確立」施策だけにとどまらず、海外技工についても国内技工同様、材料基準は薬事法に、製作基準等については歯科技工士法に準じた取り扱いとすること。
以上
プリント用pdfファイル
22-10-21 保団連 厚労省へ要請.pdf